【11月健康コラム】寒くなる前に知っておきたい!最新ガイドラインに基づく血圧管理の真実
2026.11.02
11月に入り朝晩の冷え込みが厳しくなってきました。寒い冬は「血圧が上がりやすい」季節です。寒さによって血管がギュッと収縮し、心臓に負担がかかりやすくなるためです。
「高血圧は高齢者の病気」「症状がないから大丈夫」と思っていませんか?実は、高血圧は働く世代から高齢者まで、あらゆる世代にとって見逃せない健康リスクです。
今回は、2025年に改訂された最新の血圧治療ガイドラインをふまえ、高血圧に関する重要知識や正しい家庭血圧の測り方、日常生活でできる対策をわかりやすく解説します。ご自身はもちろん、ご家族の健康を守るためにもぜひ参考にしてみてください。
1. 知っておきたい「高血圧の10のファクト」と最新ガイドライン
まずは、最新ガイドラインで整理された「高血圧に関する10のファクト」を押さえておきましょう。
📌 高血圧に関する10のファクト
- 将来のリスク: 高血圧は将来の脳卒中・心臓病・腎臓病・認知症の発症リスクを高める病気です。
- 年間死亡数: 日本では、1年間に17万人が高血圧が原因となる病気で死亡しています。
- 日本の現状: 日本の血圧コントロール状況は、主要経済国の中で最下位レベルです。
- 降圧の効果: 上の血圧(収縮期血圧)を10mmHg下げると脳卒中・心臓病が約2割減少します。
- 降圧の目標値: 高血圧の人では、年齢にかかわらず、上の血圧を130mmHg未満、下の血圧を80mmHg未満まで下げると脳卒中や心臓病が少なくなります。
- 生活習慣の改善: 減塩、運動、肥満の是正、節酒などの生活習慣改善で血圧は下がります。
- 食塩摂取目標: 日本人の食塩摂取量は1日10gと世界的に見ても高く、高血圧の人は1日6g未満にすることが推奨されます。
- 2剤以上の併用: 目標の血圧レベルに達するために、多くの高血圧患者では血圧を下げる薬が2種類以上必要になります。
- 降圧薬のメリット: 血圧を下げる薬は安価・安全で効果的であり、副作用よりも血圧を下げる利益のほうが大きいことがほとんどです。
- 家庭血圧の重要性: 日本は家庭血圧計が普及しており、家庭での血圧測定が高血圧の診断と治療に大変役立ちます。
🎯 新しい降圧目標は「130/80 mmHg 未満」
最新ガイドラインでは、診察室での目標血圧が「130/80 mmHg 未満」に設定されました。「サイレントキラー(静かなる殺し屋)」と呼ばれる高血圧は、症状がない時期から適切にコントロールすることが大切です。
2. なぜ「朝の血圧」が重要?「血圧朝活」を始めよう!
「血圧高値の自覚がない」という方が多いため、当院でも「血圧朝活」を推奨しています。まずは自分の朝の血圧が「130」を超えていないか意識してみましょう。
☀️ 朝測定するべき理由
心筋梗塞や脳卒中といった重大な循環器イベントは、早朝に集中して発生します。朝の血圧が高い状態(早朝高血圧)はリスクを顕著に引き上げるため、朝の血圧測定が欠かせません。
💡 身近な測定の試み(Kiosk血圧測定)
街中や施設等で手軽に測定できる「Kiosk血圧測定」など、日頃から血圧に触れる機会も増えています。見かけたらぜひ一度測ってみましょう。
3. 正しい家庭血圧の測り方と血圧計の選び方
家庭での降圧目標値は【125/75 mmHg 未満】となります。より正確なデータを得るために、以下のポイントを確認しましょう。
📱 血圧計の選び方
- 推奨:上腕カフ式(国際基準で精度検証された機器を選び、腕の太さに合ったカフを使用しましょう)。
- 手首カフ式について:手首式は尺骨動脈と橈骨動脈の振動を同時に測定しづらく、姿勢や角度で数値がブレやすいため、上腕カフ式と比較して精度面で劣ることが多いですが、上腕囲がカフの大きさに適合しない場合などに検討されます。
📐 正しい測定手順とポイント
- 腕の準備:原則として利き手と逆の腕で測定します。カフのマークを上腕動脈の位置に合わせます(薄手のセーター1枚程度なら着たままでOKです)。
- 測定手順:朝と晩の1日2回、排尿後に座位で1〜2分安静にして測ります(※尿意は血圧を上昇させます)。
- 不整脈がある方:脈の乱れにより数値が不正確になることがありますが、3回測定してその平均値をとることで、診療の貴重な参考にできます。
4. 今日からできる生活習慣改善と「減塩チェック」
血圧を下げるためには、お薬だけでなく毎日の生活習慣の見直しが効果的です。
🥗 あなたの塩分摂りすぎ度は?【簡易食塩摂取量チェック】
ガイドラインに基づく目標(1日6g未満)に向けて、普段の食習慣をチェックしてみましょう!
- 「はい」が 0〜1個(良好):素晴らしい食習慣です!現在の減塩意識をキープしましょう。
- 「はい」が 2〜4個(注意):無意識に塩分を摂りすぎている可能性があります。「汁を残す」「調味料はかけるのではなく、小皿につけて食べる」などの工夫をしてみましょう。
- 「はい」が 5個以上(要対策):塩分過剰のリスクが高い状態です。高血圧予防のため、当院での食事相談や減塩のコツも気軽にご相談ください!
🏃♂️ 最新エビデンス:筋トレ(レジスタンス運動)も降圧に有効!
これまではウォーキングなどの「有酸素運動」が主軸とされてきましたが、最近ではスクワットなどの「レジスタンス運動(筋トレ)」も同等の降圧効果があることが明らかになり、推奨され始めています。
- 有酸素運動:ウォーキング、ジョギング、自転車エルゴメーター、スイミング
- レジスタンス運動:スクワット、腕立て伏せ、プランク
🔬 運動で血圧が下がる仕組み
運動を行うと交感神経系やレニン・アンジオテンシン系が抑制され、利尿ペプチド系・ドパミン系・カリクレイン系といった「降圧系」が活性化します。これにより心拍出量が整い、末梢血管抵抗が下がって血圧が低下します。
🌿 その他の生活習慣ポイント
- カリウム(K)の積極的摂取:野菜や果物から意識して摂りましょう(※医師からカリウム制限指示のない方)。
- 適正体重の維持・節酒・禁煙
- 室内環境:冬場は室温を18度以上に保ち、寒冷暴露を防ぎましょう。
- 睡眠:6〜8時間の睡眠を確保しましょう。
- 排便:便秘を改善して排便時の力みを防ぎます。
- ストレスの回避
5. 年齢・季節に応じた注意点とお知らせ
⚠️ 高齢者の方の注意点
高齢の方は、急な立ち上がり時の「起立性低血圧」や、食後に血圧が下がる「食後低血圧」を起こしやすくなります。ふらつきやめまいを感じた場合は無理をせずご相談ください。
❄️ 季節に合わせた「内服調整」
季節による血圧差を小さくすることは予後改善に深く関わってきます。夏と冬で血圧が変動するため、季節ごとの内服調整がとても重要です。
📲 デジスマアプリで毎日の血圧をスマート管理
当院では「デジスマ診療アプリ」を導入しています。アプリをご活用いただくと、ご自宅での血圧記録をカルテと連携し、より確実でスムーズな診療が可能になります。ご来院の際はぜひご活用ください!
参考文献・ガイドライン
- 日本高血圧学会『高血圧管理・治療ガイドライン2025』
- 日本医師会雑誌『国民の血圧を下げる-新しい高血圧ガイドラインのねらいとポイント』

