【2026年改定!】睡眠時無呼吸症候群(SAS)の最新治療と在宅精密検査
2026.09.01
「しっかり寝ているはずなのに、日中ずっと体がだるい」 「家族から夜間の激しいイビキや、時々息が止まっていることを指摘された」
このようなお悩みをお持ちではありませんか? 9月3日は「ぐっ(9)すり(3)の日」と言われることもあるようですが、秋は夏の疲れの残りや季節の変わり目の寒暖差から、ご自身の睡眠の質を見直す方が増える時期です。
睡眠時の呼吸トラブルは、単なる「寝不足」や「疲れ」の問題だけではないことがあります。放置すると深刻な病気につながる可能性がある「睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)」をご存知でしょうか。
2026年6月の診療報酬改定により、SASの保険適用基準が見直され、検査や治療を受けやすい環境が整いました。本記事では、SASの基本的な情報から、改定が行われた背景や最新の改定ポイント、当院で実施している入院不要の精密検査、多様化する治療選択肢まで詳しく解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは?放置するリスク
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは、睡眠中に気道(空気の通り道)が狭くなったり塞がったりすることで、何度も呼吸が止まったり浅くなったりする疾患です。医学的には「10秒以上の呼吸停止(無呼吸)や呼吸が弱くなる状態(低呼吸)が、1時間に5回以上生じる状態」と定義されています。
主な自覚症状と他覚症状
・就寝中の症状: 激しいイビキ、呼吸の停止、何度も目が覚める、夜間の頻尿、寝汗
・起床時・日中の症状: 起床時の頭痛や口の乾き、日中の強い眠気、熟睡感の欠如、集中力の低下
SASを放置することで高まる健康リスク
睡眠中の無呼吸は、身体に著しい低酸素状態とストレスを与えます。その結果、交感神経が優位な状態が続き、以下のような疾患の発症・悪化リスクが跳ね上がることが分かっております。
・高血圧・脂質異常症・糖尿病などの生活習慣病
・心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患
・脳卒中(脳梗塞・脳出血)
・日中の強い眠気による重大な交通事故や労働災害
SASは単に「眠りの質が落ちる」だけでなく、生命に関わる循環器系・脳血管系疾患と密接に関連している病気です。
【2026年6月改定】なぜ今、基準が変わったのか?改定の背景とポイント
2026年6月に実施された診療報酬改定では、SASの診断および治療における保険適用基準の緩和・適正化が行われました。
なぜ保険適用の基準が見直されたのか?
最大の理由は、「SASに伴う将来的な重篤な疾患リスク(心疾患・脳卒中・生活習慣病の悪化)を未然に防ぐ予防医療の強化」です。
これまで、軽症〜中等症の段階にある患者様の中には、「自覚症状はあるものの、従来の厳しい保険基準(AHI数値)にはわずかに届かない」という理由で、保険適用での治療を受けられず経過観察になるケースが多くありました。しかし、放置されている間に動脈硬化や心負荷が進行し、数年後に心筋梗塞や脳卒中を発症してしまうリスクが臨床データから強く指摘されるようになったのです。
「重大な合併症を引き起こす前に、リスクのある段階で早期介入・治療を行うべきだ」という観点から、今回の改定でより広い患者様に適切な治療が届くよう基準が見直されました。
改定による具体的な変化
・治療適用ラインの緩和で早期治療が可能に
中等症の段階から早期に保険診療での治療へ移行しやすくなり、将来の健康リスクを軽減するための選択肢が広がりました。
・「過去に基準外だった方」も再評価の対象に
「以前、医療機関で検査を受けたけれど『基準に届かないから経過観察』と言われた」という方でも、現在の新基準に照らし合わせることで、保険適用内で治療をスタートできる可能性があります。
SASの2つのタイプ(閉塞性と中枢性)
SASは、呼吸が止まる原因によって大きく2つのタイプに分類されます。
・閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
SASの約9割を占めます。首周りの脂肪や扁桃肥大、舌の落ち込みなどによって気道(空気の通り道)が物理的に狭くなったり塞がったりすることで起こります。喉が塞がっているものの息を吸おうと胸や腹部は動くため、激しいイビキを伴うのが特徴です。
・中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
気道の塞がりではなく、脳(呼吸中枢)からの「息をしなさい」という指令が一時的に途絶えてしまうタイプです。心不全や脳卒中などの持病がある方に多く見られ、呼吸の努力自体が止まるため、閉塞性に比べて大きなイビキをかかないケースもあります。
当院の特徴:1泊入院不要で受ける「在宅精密PSG検査」
SASの診断やCPAP治療の適応判断は、まずご自宅で行える「簡易検査」からスタートします。簡易検査で重度の無呼吸(AHI 30以上)が確認された場合はそのまま確定診断となりますが、数値が基準に届かないものの症状から重症のSASが強く疑われる場合や、より正確な睡眠状態の評価が必要な場合には、精密検査「ポリソムノグラフィー(PSG)検査」を行います。
また、PSG検査には「閉塞性」と「中枢性」を明確に鑑別するという極めて重要な役割もあります。簡易検査では分からない「脳波」や「胸・腹部の呼吸運動」を同時に記録することで、無呼吸の根本原因を正確に突き止めることができます。
従来、この精密PSG検査を行うには病院へ1泊入院するのが一般的でした。しかし、「仕事や家事を休めない」「病院のベッドだと緊張して眠れない」といった理由で検査を躊躇される方が多くいらっしゃいました。
当院の在宅精密PSG検査メリット
当院では、患者様のご負担を最小限に抑えるため、ご自宅でできる在宅精密PSG検査を導入しています。
・日常生活を止めずに検査ができる: 仕事帰りや家事の合間に受診・説明を受けていただき、検査機器は後日ご自宅へ配送となります。ご自宅で検査を行い、翌朝は機器を外して普段通り出勤・通学が可能です。
・自然な睡眠データが取得できる: 慣れ親しんだご自身のベッドや布団で休んでいただくため、環境の変化による不眠を防ぎ、より日常に近い精度の高いデータを採取できます。
・経済的・時間的負担の軽減: 入院費用やスケジュール調整の手間がかかりません。
状態や生活スタイルに合わせて選べる治療法
SASの治療法として多くの方が想像されるのはマスクによる治療、CPAP(シーパップ)ではないでしょうか。しかしSASの治療はCPAPだけではありません。患者様の症状の程度、原因、生活環境に合わせてさまざまなアプローチを組み合わせます。
1.CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)
中等症から重症の患者様に対する標準的な治療法です。就寝時に専用のマスクを装着し、機械から空気を送り込んで気道を押し広げます。
・特徴: 睡眠中の無呼吸やイビキが即座に消失し、日中の強い眠気や疲労感が劇的に改善します。改定により導入のハードルが下がりました。
2.マウスピース療法
下あごを少し前方に固定して装着することで、気道を広く確保する専用の器具です。
・特徴: 軽症〜中等症の方や、CPAPの装着感になじめない方、出張や旅行が多く機械の持ち運びが難しい方に適しています。歯科医院にてマウスピースの作成を行います(マウスピースを作成している歯科医院へのご紹介を行います)。
3.薬物療法(肥満症を伴うSASへの最新アプローチ)
SASの大きな原因の一つが、首周りや上気道への脂肪沈着です。近年の医療技術の進歩に伴い、肥満症を合併しているSAS患者様に対して、体重管理をサポートする注射薬(GIP/GLP-1受容体作動薬等)の活用という新たな選択肢も広がっています。
・特徴: 体重減少に伴い気道の閉塞が根本から改善され、無呼吸の数値自体が軽減することが期待できます。
4.生活習慣の改善指導
すべての治療の基礎となる取り組みです。
・減量: 体重を落とすことで上気道の脂肪を減らします。
・体位療法(寝姿勢): 仰向けではなく横向きで寝ることで、舌根沈下(舌が奥に落ち込むこと)を防ぎます。
・節酒・禁煙: アルコールは気道の筋肉を緩め、タバコは気道粘膜の炎症を引き起こすため、就寝前の飲酒を控え、禁煙を推奨します。
5.外科的処置
SASの原因が、鼻中隔彎曲症(鼻の骨の曲がり)やアデノイド・扁桃肥大などの解剖学的な問題である場合や、高度な外科的処置が必要と判断される場合は、耳鼻咽喉科や高度専門医療機関へご紹介します。
当院では検査・初期診断を行い、必要に応じて適切な専門病院をご紹介するスムーズな連携体制を整えておりますので、どのような症状でも安心してご相談ください。
まとめ:日中のパフォーマンス向上と健康寿命のために
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、適切な検査と治療を行えば、劇的に症状が改善する疾患です。睡眠の質が向上することで、日中の仕事や家事のパフォーマンスが上がるだけでなく、将来の重大な病気を予防することにもつながります。
2026年の診療報酬改定により、心血管疾患などの深刻なリスクを未然に防ぐための治療環境が整いました。また、当院であれば入院することなくご自宅で精密検査を受けることが可能です。
「イビキが気になる」「しっかり寝ても疲れが取れない」「過去の検査で経過観察と言われた」という方は、どうぞお気軽に福岡市東区の荒巻医院までご相談ください。一人ひとりの状態に合わせた最適な治療法をご提案いたします。
参考文献:
日本睡眠学会 / 日本呼吸器学会 『睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020』https://www.jrs.or.jp/publication/jrs_guidelines/20200730145402.html
厚生労働省 / 中医協(中央社会保険医療協議会)『令和8年度(2026年度)診療報酬改定の概要(医科)』
Somers VK, et al. (2008)“Sleep apnea and cardiovascular disease: an American Heart Association/American College of Cardiology Foundation Scientific Statement.” Circulation, 118(10): 1080–1111.
Marin JM, et al. (2005)“Long-term cardiovascular outcomes in men with obstructive sleep apnoea-hypopnoea with or without treatment with continuous positive airway pressure: an observational study.” The Lancet, 365(9464): 1046–1053.
Malhotra A, et al. (2024)“Tirzepatide for the Treatment of Obstructive Sleep Apnea and Obesity.” The New England Journal of Medicine (NEJM), 391(13): 1193–1205. (SURMOUNT-OSA Study)


